世界構造仮説④ ― 約束の時

世界構造と消された歴史

<B-5>

世界が、止まった瞬間があった。


巨人族と海王族が、動き出していた。

このままでは、この世界が終わってしまう。

「月から来たもの全てを、 この星から排除するしかない」。

その決断が、実行へと向かおうとしていた。


その時、一人の人物が前に出た。

その名を……


ジョイボーイ。


大地族のリーダー的存在だ。

誰かが決めた王ではない。 気づけばその場の中心にいる。
笑いながら場をまとめ、 いつの間にか皆が後ろをついていく。
恐竜たちすらも、彼にはなついていた。

そんな男が、珍しく、真剣な顔をしていた。


「待ってくれ」。

その一言が、世界を止めた。


ジョイボーイは、ひとつの提案を持ちかける。

「まず、話しを聞いてくれ……」。


こうして、かつてない会議が初めて開かれる。

巨人族。 海王族。 大地族。

そして、月の民の帰還派の幹部たちも加わった。

三大生態の主だった者たちと、
月の民の帰還を望む者たちが、
同じ場に座った。


その場でジョイボーイは、約束を掲げる。


「この星に残っている月の民をまとめ上げ、
すべてを説得して、 月へ帰還させる」と。

争いではなく、帰還によって終わらせる。

その役目を、自分が引き受ける……と。


すぐに賛同が得られたわけではない。

大地はすでに削られ始めている。 時間を与えれば、被害は広がる。

そう考える者たちも多かった。


だが最終的に、巨人族と海王族は条件を出して賛同する……

「期限を決めること」。

「その期限までに月の民を帰還させるなら、 剣は収める」……と。


こうして、ひとつの協定が結ばれる。

後に「最初の約束」と呼ばれることになる、 その誓いが、静かに交わされた。


会議が終わると、ジョイボーイと大地族、 そして帰還派は、次の難題へと向かう。

支配派を、説得すること。

その約束を、受け入れさせること。


その動きを見ていた巨人族が、 静かに口を開く。

「それなら、手を貸そう」。

散らばった月の民を集め運ぶための船。

その巨大な船の建造を。


そして海王族もまた……。

「その船を曳いて、 広い世界に散らばった月の民を回収する役目は
私たちが引き受けよう」と。

……その船の名は、後に「ノア」と呼ばれる。


三大生態と帰還派が、 初めてひとつの方向を向いた瞬間だった。


ただ……それとは別に、月の民の帰還派の限られた者たちだけで、
極秘裏に、別の場所で、帰還の為の準備を始めた。


約束は結ばれた。

世界はまた動き出した。

……だがこの時、誰もまだ知る由もなかった。

……この約束が果たされることは、なかったと。

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