大地を失った者たちは、海へ出た。
<B-8>
ジョイボーイは、生きていた。
わずかな仲間とともに、 船で難を逃れていた。
苦渋の選択だった。
大地族にとって、大地は生活そのものだ。 その大地を捨て、海に活路を求める。
それがどれほどの決断だったか。

……だが、他に道はなかった。
果てしなく広がってしまった海に、 あの自由で広大な大地を求めて——。
これが、のちの原初の海賊となる。
しかし海の上から見える世界は、 かつての世界とは違っていた。
ウラヌスが削った大地の跡は、 想像をはるかに超えていた。
広大だったはずの大地が、消えている。 かわりにできた海原は、果てしなく続いている。
水平線の先が、どこまでも見えなかった。
荒れ狂う嵐、照り続ける太陽、テリトリーを侵され襲いかかる海王類。
慣れ親しんだ大地とは全く違う日常に、戸惑いの連続だったが、
疲労や恐怖より少しづつ好奇心が上回り、
悪戦苦闘しながらも、冒険を楽しむ日々に。
……長い航海ののちに、 ジョイボーイの一行は「ある小さな島」にたどり着く。
そこは、月の民が密かに月へ還る準備を進めていた場所だった。
ウラヌスの攻撃から逃れた、高度な文明の灯火。
わずかではあるが、帰還派の人々と機械が残っていた。
幹部達から伝えられたメッセージ、
かすかに覚えていた最後の砦。
なかには懐かしい顔も……、再会を喜んだ。
だが、ジョイボーイの心は晴れなかった。
巨人族と海王族との、約束を守れなかった。
月の民の仲間たちを、守れなかった。
大地族の大地を、……守れなかった。
その事実が、重くのしかかっていた。
いつか、必ず。
巨人族へ。海王族へ。 果たせなかった約束への、謝罪と誓いを——。
いつの日か。
遥かなる大地と自由を求める者が現れる。
月の民を月へ還すという約束を果たす者が現れる。
その時のために。
この島への道しるべと、忘れてはならない真実を——。
仲間たちとともに、残りの力をしぼり出し……
石に刻んだ。

……刻み終えた頃、 エメトはジョイボーイのそばに立っていた。
月の民の機械兵。
ともに戦い、ともに海に出た戦友。
お互いに生命の灯火は、もう尽きようとしていた。
ジョイボーイは、残り少ない自らの力をメッセージにかえて、
エメトに託した。
未来の意思を受け継ぎし者へ。
その希望を、届けてくれ。
その後の彼を見た者は、いない……。
勝利を手にした支配派の指導者は、 世界の再構築に着手した。
支配派が築いたいくつかの王国。 そして、力の加護を求めて従った近隣の王国。
その中から、20人の王が集まり、 新たな秩序のもとに署名した。
世界政府——。

20人の王による、新たな世界の設計図。 崩壊しかけた世界を維持するための機関。
しかしその本当の顔は……支配のための檻であった。
だが指導者には、もう一つやるべきことがあった。
あと一歩まで追い込まれた、あの恐怖。
大地族の力。 恐竜たちの咆哮。 ジョイボーイという存在。
その記憶が、消えなかった。
恐怖の再来に、フタを閉じなければならない。
あの戦いを生き延びた者を探し出す。
真実を知る者の口を封じる。
残る痕跡を、歴史ごと消し去る。
こうして、歴史が消された。
ちょうど——100年分だけ。
これがいわゆる「空白の100年」の正体なのでは、 ないだろうか……。
世界構造仮説編【完】
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